ちょんがり
ひと昔前の田舎での、たまにある嫁取りや年祝いなど、家での祝いごとには近所や親戚が押し掛けて大賑わいであった。
酒宴が始まると、飲むほどに酔うほどに宴は次第に盛り上がる。家祝いの謡いがすむと話し声や箸拳にも力が入り、歌や手拍子でワンサと賑わいだす。
そのうちに踊り好きが準備してきた構えで、お待ちかねの「ちょんがり踊り」となる。
さて踊り手のいでたちは、墨で八眉目をくるり、鼻の穴に巻き煙草を切って差し、口の回りは点々口髭、赤い口紅ほっぺに丸く、絞りの手拭ねじほうかむり、上着はボタン掛けジバンに、大きなすねあての股引きはいて、両手に小皿二枚づつ指に挟んで、カツカチカツと打ち鳴らし、小腰かがめてすね曲げ開いて、カツカチの拍子にテックリテクリと抜き足差し足、かぶり振り振り、時折肩をガツガツと、おもしろおかしな踊りのいでたちに、わんさと歓声が上がる。
お客は思い思いに手拍子や、サワチや小皿を赤箸でカチンカチンと叩いて踊る拍子を音に合わして、声のえい歌い手が声を張り上げて、
「ア~ァヤリ、ヤリヤリヤリ、やりかけましては、只のやりでは、こたたりますまいに、フントコドッコイ、コレワイサのサ。
わたしゃ高知のチックト東のタロスの弟でジロスでござるが、こんどこの度、本川越裏門寺川、シシ、サル、タヌキのお住まい所にさまよいきたれば、ヒエ麦くろうた娘に、お袈裟と申して、すこぶるべっぴんこれありそうろう。
一度見るやらぞっこん惚れ込み、お袈裟お尻を追い掛け回すが、山ザル、キジ子の一声、おまんきらいじゃと振りとばされたぞ、フントコドッコイ。
稲村当家の、じんじがあるとて、お袈裟のいでたち、自慢のこしらえ太布のいっちょら肩前下がりに、ねじくれ島田をコビンにねじつけ、藁のぞうりをせったとぬかして、色の黒いのに白粉こてこて歩く姿は、春の焼け山、雪解けみたよに、ふっとび、すっとび歩くかっこうは、カニの横這い鳥の横飛び、とっても見られん、フットコドッコイ。
男だてらに山葉煙草のどぎついやつめを、桐のどうらんにしこたま詰め込み、パッパ、パッパとくすらして、歩く姿は、ウモー(牛)のなで足アヒルのなげ足、竹の子丸ぼし、節ぶし張り上げ、ヤランセ、ヤランセ。
小猿の木登りゃ、さでつき、飛びつきタライのブンブで深いこたあるまい、子供の山行き、お袈裟についてけ、そら行け、フントコドッコイ、コレワイサノサ」
と小皿カチカチ、手拍子パンパン、ひょうげた踊りに女子供も寄り添うてわんさわんさと大賑わい、祝宴のクライマックスいつまで続くやら、ほんとに愉快でユーモラス。


