浮姫物語(夢のお伽ばなし)
前書き、夜寝るまえにわたしは比羅明神様の額に二礼して手を合わし、今日もお水を戴き、風呂に入り、流し、水のお陰で生きております。
有り難うございます。と頭をたれて床に就きます。
眠りの中では色々な夢を見ますが、夢はすぐ忘れてしまいます、昨夜は不思議なお伽の夢見ました。
その夢は◎昔、富士川の流れの中ほどに小さな村がありまして、その村は梅雨時や大雨が降ると川の水があふれて田畑が荒らされて村人は困っていました。
村人は色々と話し合い悩んだ結果、こりゃ水神様のたたりじゃけ鎮めるために女の稚児を選んで、人身供養しようと話がきまり、村の小さい女の子の中からくじ引きで選びました。
そしたら貧しくて子沢山の家に生まれて間もない三女がくじ引きで当たって選ばれた。
両親は可愛い子供を泣く泣く、村人のため人身供養にと出した。
水かさの多い川中に高い抗を立て三方に網を引き張って安定し、竹かごの中に女の子を包んで入れ、立てた抗の先につるし上げた。
村人は川原から人身供養の稚児を哀れと手合わし拝んだ。
その夜また夕だちで大雨が降り川水は増水して立抗も竹かごの子供もおし流された。
風雨に荒れくるうた濁流で稚児は溺れ死にそうこれを見た弁天さまは稚児を哀れと思い救うた、稚児を乗せた竹かごはスィスィと浮いて流れ流れて大海へ、翌日は晴天で穏やかな海上に稚児を乗せた竹かごは静かな波にゆれていた。
小舟に夫婦で乗った漁師が河口の海で、浮いた竹かごを見付けて近くによって見たら、竹かごの中に女の子がおる、これは不思議なこと、子供のないわしらに弁天さまがおさずけ下さったありがたいことじゃと、だいじに救い上げ抱きしめて家に帰った。
さてこの子の名前は、海水に浮いていた授かり子じゃけ浮姫と名付けて大事に育てようと決めた。
その後、可愛がりほぅほぅとだいじに育てるうちに浮姫はすくすくと成長し月日はたった。
この浮姫は賢くて優しくて美しく順に育ち十七歳を迎えた。
天才美女で貴賓があり人々に慕われた。
時にある庄家の跡取り息子で立派な若いしにぜひ嫁にと所望された、育ての両親が浮姫に尋ねてみたら、えい若いしのもとに嫁入りしたいが、私には事情があって行くことが出来ない。
それは富士川ぞいの荒れる村から水神様を宥めるために人身供養に出された身で既に命のない体を弁天様に助けられ、成人したら竜宮城の弁天様にお仕えすることに決められております。
来る八月の十五夜に竜宮に出仕いたします、お育て戴いたご恩は決して忘れません。
これから以後の孝養は別世界からお二人様の健康と幸せ長寿を祈り続けます。
と申し上げて、八月十五夜の満月に吸い込まれるように浮姫の姿は消えて行きました。 浮姫を育て上げた夫婦は離別を悲しみましが、その後は浮姫と楽しかった月日の思い出をむねに描き浮かべながら健康で幸せに年月を過ごして長生きして、共に白髪のお爺さんとお婆さんになりました。
縁起物の床飾りのじょうと爺さんと、じょうと婆さんのはじまりでしょうか?消えなかった夢。


